同じストレスを感じているのに、太る人と痩せる人がいるのはなぜでしょうか。
実は、ストレスに対する体の反応は性格や体質によって大きく変わることが分かっています。仕事のプレッシャーや人間関係の悩みを抱えているとき、甘いものが無性に食べたくなる人もいれば、全く食欲がわかなくなる人もいます。
この違いを理解することで、自分に合った体重管理の方法が見つかります。
この記事で学べること
- ストレスで太る人は「コルチゾール」というホルモンの影響で満腹感を感じにくくなっている
- 内向的で感情を溜め込む性格の人は、食べ物でストレスを解消しやすく体重が増えやすい
- ストレスで痩せる人は交感神経が過敏に反応し、食欲そのものが低下する傾向がある
- 適度な運動と十分な睡眠だけで、ストレスホルモンの分泌を抑えられる
- 半年で体重の5%以上の変化があれば、専門家への相談が必要な目安となる
ストレスで太る人の性格と体の仕組み

ストレスを感じたとき、体重が増えやすい人には共通する性格傾向があります。
厚生労働省の調査でも、ストレスと身体反応の関係性が報告されています。
感情的で内向的な性格の方は、ストレスを食べ物で解消しようとする傾向が強いことが研究で分かっています。悩みや不安を誰かに話すことに抵抗を感じ、一人で抱え込んでしまう方ほど、食に走りやすいのです。
ストレスを感じると、脳の大脳辺縁系という部分が興奮してドーパミンを分泌し、食欲をコントロールする摂食中枢を刺激します。同時に、満腹中枢の働きを抑えるレプチンの分泌も抑制されるため、いつも通りの量を食べても満腹感を感じにくくなります。
さらに、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されると、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが減少し、食欲を抑える働きが弱まってしまいます。
太りやすい人に多い性格的特徴
完璧主義で自分に厳しい方も、ストレス太りしやすいタイプです。物事が思い通りに進まないとき、強いストレスを感じやすく、その解消方法として食べることを選んでしまいがちです。
特に甘いものやジャンクフードを欲するのは、ストレスが強ければ強いほど、同じくらい強いエネルギーを持つ食品を求める体の反応です。
低い自己肯定感を持つ方も注意が必要です。ストレスへの耐性が低くなり、小さな出来事でも大きなストレスとして感じてしまうため、食べる頻度が増えやすくなります。
ストレスホルモンが体重を増やすメカニズム
コルチゾールの分泌が増加すると、体内に蓄えられていた糖分を全身の筋肉でエネルギーとして利用しようとします。しかし、現代人のストレスは慢性的なもので、身体の活動を活発にするための糖分を必要としません。
その結果、血液中の糖分が消費されず、肥満ホルモンと呼ばれるインスリンが分泌され、糖分が体内に脂肪として蓄えられてしまいます。
また、コルチゾールには成長ホルモンの分泌を抑える作用もあり、筋肉の再生・修復の働きが抑制されて筋肉量が減り、代謝が低下して太りやすくなります。
個人的な経験として、ストレスが溜まると無意識に甘いものを探している自分に気づくことがあります。実際、仕事が忙しい時期はコンビニスイーツを買う頻度が明らかに増えていました。これを自覚してから、ストレスを感じたら軽く散歩をするようにしたところ、甘いものへの欲求が少し落ち着いたように感じています。
ストレスで痩せる人の性格と体の仕組み

一方、ストレスで体重が減る人は、神経質で責任感が強い性格傾向にあることが分かっています。
真面目で几帳面、妥協が苦手な完璧主義の方は、思い通りに物事が進まないときに強いストレスを感じやすい傾向があります。
痩せやすい人に多い性格的特徴
内向的で感情を内に溜め込む方も、ストレス痩せしやすいタイプです。心配性で不安を感じやすく、その不安が体に直接影響を及ぼします。
活動的で外交的な性格の方は、ストレスを運動や他者とのコミュニケーションで解消しようとするため、比較的太りにくい傾向にあります。
ストレスが食欲を低下させるメカニズム
不安や緊張、恐怖、怒り、悲しみといった精神的ストレスを受けると、交感神経が過剰に反応します。すると、消化管の働きを調節する副交感神経の働きが弱まり、内臓機能の働きが低下することで、空腹を感じにくくなります。
ストレスを感じている間は内臓機能の働きが悪くなるため、何も食べなくても空腹を感じにくい状態が続きます。これが長期間継続すると、どんどん体重が減少してしまうのです。
ストレスによる胃腸障害が起こると、食べ物から十分に栄養を吸収できなくなり、必要な栄養が不足することで不健康な痩せ方になります。
肌のシワが増えたり、肌がカサつくなど、見た目にも不健康になってしまうことが多いのです。
ストレス痩せの危険なサイン
6〜12ヶ月で体重の5%以上が意図せず減少している場合は注意が必要です。
顔色が悪くなり、特に青白い顔色の場合は貧血が疑われます。ストレスによる栄養不足で、鉄分やビタミンB12などが不足すると、赤血球の数やヘモグロビン量が減少し、青白い顔色になってしまうことがあります。
体の怠さや集中力の低下を感じる場合も、ストレス痩せのサインかもしれません。
体重変化のタイプ別比較
| 項目 | 太るタイプ | 痩せるタイプ |
|---|---|---|
| 性格傾向 | 感情的、内向的、低い自己肯定感 | 神経質、心配性、責任感が強い |
| 食欲の変化 | 食欲増進、満腹感を感じにくい | 食欲低下、空腹を感じにくい |
| 好む食べ物 | 甘いもの、高カロリー食品 | 食事全般への関心低下 |
| 体の反応 | コルチゾール増加、代謝低下 | 交感神経過敏、消化機能低下 |
| ストレス解消法 | 食べることで解消しようとする | 運動やコミュニケーションで解消 |
ストレスに対する体の反応を分かりやすく比較してみました。
すべてを覚える必要はありませんが、ざっくりと特徴を覚えておくと良いでしょう。
あなたはどっち?ストレス太り・痩せタイプ診断
ストレス太りタイプチェック
- ☐ ストレスを感じると甘いものが無性に食べたくなる
- ☐ 悩みを誰かに話すのが苦手
- ☐ 完璧主義で妥協が苦手
- ☐ 食べることで気持ちが落ち着く
- ☐ 自己肯定感が低いと感じる
3つ以上当てはまる方: ストレス太りタイプの可能性が高いです
ストレス痩せタイプチェック
- ☐ ストレスを感じると食欲がなくなる
- ☐ 神経質で心配性
- ☐ 責任感が強く真面目
- ☐ 運動でストレスを解消することが多い
- ☐ 活動的で外交的
3つ以上当てはまる方: ストレス痩せタイプの可能性が高いです
健康的なストレス対処法

おすすめの健康的なストレス解消法
- 食事以外でのストレス解消を優先する
- 睡眠の質を改善する
- バランスの取れた食事を心がける
- 人とのつながりを大切にする
体重の増減に関わらず、ストレスそのものを適切に管理することが最も重要です。
食事以外でのストレス解消を優先する
ストレスを感じたら食べることが習慣化してしまうと、食欲をコントロールできなくなるだけでなく、肥満やメタボリックシンドロームのリスクを上げてしまいます。
散歩やウォーキングなど適度な運動で体を動かすことは、どちらのタイプにも効果的です。運動するとコルチゾールが分泌され、運動をやめると減少します。これを続けると、ストレスがかかった際のコルチゾール分泌量を抑えることができます。
ハードな運動や長時間の運動は必要ありません。30分程度のウォーキングや、寝る前のストレッチなど、無理のない運動を生活に取り入れるだけで効果があります。
関連記事:ダイエット効果だけじゃない?運動を習慣化するメリット
睡眠の質を改善する
睡眠不足自体が慢性的なストレスとなり、コルチゾール分泌の原因になります。日中眠気を感じない程度の睡眠時間は、最低限確保するようにしましょう。
睡眠時間が短い人は、野菜やフルーツなどの健康的な食材よりも、甘いものや高脂質・高カロリーな食品を好んで選ぶ傾向にあります。
40℃以下のぬるめのお湯にゆったりとつかってリラックスしたり、寝る前に軽いストレッチを行うなど、なるべく深い眠りが得られるように工夫しましょう。
バランスの取れた食事を心がける
🔥 ストレス太りタイプ向け
💡 ポイント: 高タンパク質・低GI食品で満腹感を持続させ、間食は栄養価の高いものを少量に。
🍚 ストレス痩せタイプ向け
💡 ポイント: 消化に優しい食材を選び、少量でもエネルギーになる食品を定期的に摂取。
太りやすい人は、高カロリーの食事を避け、一汁三菜を意識したバランスの良い食事を心がけましょう。
痩せやすい人は、食欲がなくても意識的に食事を取ることが大切です。おかゆやうどんなど消化しやすい食事から始め、かぼちゃやじゃがいもなど消化の良いおかずも取り入れてみてください。
関連記事:ダイエット中はカロリーよりも「PFCバランス」が大切?PFCを意識して綺麗に痩せる
人とのつながりを大切にする
孤立は体に厳しく、家族でも親友でも人と精神的につながることが大切です。
悩みを話せる相手を見つけ、一人で抱え込まないようにすることで、ストレスの影響を軽減できます。
これまでの取り組みで感じているのは、ストレス解消法は人それぞれ違うということです。友人と話すことでスッキリする人もいれば、一人で静かに過ごす時間が必要な人もいます。大切なのは、食べること以外で自分に合った方法を見つけることだと思います。
今すぐできる!タイプ別ストレス解消法10選

食事管理と合わせて重要なのが、食べること以外でストレスを解消する方法を持つことです。
ストレスを感じたとき、無意識に食べ物に手が伸びてしまうのは、それ以外の解消法を知らないことが原因かもしれません。ここでは、自分のタイプに合わせて今日から実践できるストレス解消法を紹介します。
大切なのは、ストレスを感じた瞬間に「食べる」以外の選択肢を持っておくこと。リストの中から自分に合いそうなものを2〜3個選んで、まずは1週間試してみてください。
ストレス太りタイプ向けの解消法
感情的で内向的な傾向のある方は、食べ物でストレスを紛らわせる習慣ができやすいため、体を動かす・気分を切り替えることを優先しましょう。
- 5分間の深呼吸: 食べたい衝動を感じたら、まず5分間深呼吸。腹式呼吸を意識することで副交感神経が働き、心が落ち着きます。
- 15分の散歩: 外の空気を吸いながら歩くだけで、食欲が自然と落ち着きます。できれば緑のある場所を選ぶとさらに効果的です。
- コップ1杯の水をゆっくり飲む: 実は喉の渇きを空腹と勘違いしていることも。常温の水を少しずつ飲むことで、偽の食欲を抑えられます。
- 感情を日記に書き出す: 今感じているストレスや不安をノートに書くことで、食べる以外の感情発散ができます。スマホのメモ機能でもOKです。
- 簡単なストレッチ: 肩回し、首回し、前屈など5分程度のストレッチで体の緊張がほぐれ、気分転換になります。
💡 実践のコツ: 冷蔵庫に向かう前に「今本当にお腹が空いているか?」と自分に問いかける習慣をつけましょう。ストレスによる食欲なのか、本当の空腹なのかを区別することが第一歩です。リストを印刷してキッチンに貼っておくと、つい食べてしまう前に思い出せます。
ストレス痩せタイプ向けの解消法
神経質で責任感が強い傾向のある方は、交感神経が優位になりすぎているため、リラックスして副交感神経を働かせることが重要です。
- タイマーで食事時間をセット: 忙しくて食事を忘れがちな方は、スマホのアラームで朝・昼・夕の食事時間を設定。通知が来たら5分でもいいので何か口にする習慣をつけましょう。
- 少量頻回食: 1日3食にこだわらず、5〜6回に分けて少しずつ食べる方法。おにぎり1個、バナナ1本など、小さな食事でOKです。
- 好きな音楽を聴きながら食事: リラックスした環境で食べることで、食事が楽しくなり食欲が戻りやすくなります。お気に入りのプレイリストを用意しましょう。
- 軽い運動で食欲促進: 激しい運動は逆効果ですが、15分程度の軽い散歩は食欲を刺激します。食事の30分前がベストタイミングです。
- 誰かと一緒に食事: 一人だと食事を抜きがちな方は、家族や友人と食事する機会を意識的に作りましょう。楽しい雰囲気で自然と食が進みます。
💡 実践のコツ: 完璧主義の方は「全部食べなきゃ」と考えがちですが、まずは一口でもOKという気持ちで始めましょう。食事の時間を「義務」ではなく「自分をいたわる時間」と考えることで、心理的なハードルが下がります。好きな食器を使う、盛り付けを工夫するなど、食事を楽しむ要素を取り入れるのも効果的です。
両タイプ共通で効果的な解消法
太りやすい・痩せやすいに関わらず、誰にでも有効なストレス解消法もあります。
- 質の良い睡眠: 7〜9時間の睡眠を確保することで、コルチゾールの分泌が正常化され、食欲のバランスが整います。
- ぬるめのお風呂: 40℃以下のお湯に15〜20分浸かることで、副交感神経が優位になりリラックスできます。
- 信頼できる人に話す: 家族、友人、同僚など、安心して話せる相手に気持ちを吐き出すことで、ストレスが大幅に軽減されます。
- 趣味の時間を確保: 読書、音楽、映画鑑賞、ガーデニングなど、夢中になれる時間を週に2〜3回は作りましょう。
- SNSから離れる時間: 就寝1時間前はスマホを見ない「デジタルデトックス」を実践。比較による不安やストレスが減ります。
ここで紹介したストレス解消法を試す際は、完璧を求めず、できることから少しずつ始めることが大切です。
ストレス解消法も人それぞれ合う・合わないがあるので、いくつか試してみて、自分にしっくりくる方法を見つけてください。
最も重要なのは、ストレスを感じたときに「食べる」以外の選択肢を持っておくこと。そして、それを実際に行動に移すことです。最初は意識的に実践する必要がありますが、2〜3週間続けると習慣化され、無理なく続けられるようになります。
こんな症状があれば専門家に相談を

体重の変化が続く場合、早めに専門家に相談することが重要です。
太りすぎのサイン
食事と食事の間の時間を空けられないのは、ストレスが溜まっている証拠です。常に何か食べていないと落ち着かない状態が続いている場合は注意が必要です。
ストレス食いが習慣になってしまうと、いずれは肥満やメタボリックシンドロームにつながります。
痩せすぎのサイン
半年で体重の5%以上が意図せず減少している場合は、医療機関への相談をおすすめします。
極端な食欲低下が続いたり、体重減少のスピードが速い場合、体重減少の他にも症状が見られる場合は、ストレスではなく病気が原因で体重が減少している可能性もあります。国立精神・神経医療研究センターなどの専門機関への相談も検討しましょう。
神経性食欲不振症、甲状腺機能亢進症、糖尿病、うつ病、自律神経失調症など、体重減少を伴う病気は数多くあります。
受診の目安
食事の量が以前と変わらないのに体重が減っている場合は、まず内科を受診することが適切です。診察の結果に応じて、消化器内科、内分泌内科、精神科・心療内科などの専門科への紹介が検討されます。
まとめ:自分のタイプを知ることから始めよう
ストレスに対する体の反応は、性格や体質によって大きく異なります。
感情的で内向的な性格の方は食べることでストレスを解消しやすく、神経質で責任感が強い方は食欲が低下しやすい傾向にあります。大切なのは、自分がどちらのタイプなのかを理解し、それに合わせた対策を取ることです。
食事以外でのストレス解消法を見つけ、適度な運動と十分な睡眠を心がけることで、ストレスによる体重変化を防ぐことができます。半年で体重の5%以上の変化があれば、専門家への相談を検討しましょう。
ストレス社会と呼ばれる現代において、完全にストレスをなくすことは難しいかもしれません。しかし、自分のできる範囲で生活習慣を改善し、健康的な体重を維持していくことは可能です。まずは今日から、食べること以外のストレス解消法を一つ試してみてください。


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