- 生理前に体重が増えたりむくんだりするのは、ホルモンの変化による水分・食欲・腸の動きの変化が主な原因です
- 一時的に増えた分は、脂肪よりも水分や腸にたまった便によるものと考えられています
- むくみは生理が始まるころに強く、生理が終わったあとの時期に落ち着きやすい傾向があります
- 塩分を控えてカリウムをとる、体を動かすなど、今日からできる対策を公的な目安とあわせて紹介します
- 日常生活に支障が出るほどつらいときは、婦人科で相談できる治療があります
生理前になると、食べる量はいつもと変わらないのに体重が増えたり、顔や脚がむくんだりして不安になることはありませんか。
実はこれは多くの女性に起こる体の変化で、ホルモンの働きが深く関わっています。
この記事では、公的機関の資料や研究データをもとに、生理前に太る・むくむ原因をわかりやすく解説します。あわせて、増えた体重が戻る時期や今日からできる食事・生活習慣の対策、婦人科を受診する目安まで紹介します。
生理前の体重の増え方は、原因を知るだけで気持ちがぐっとラクになります。この記事では「なぜ起こるのか」→「いつ戻るのか」→「何をすればいいか」の順で説明します。すぐに対策を知りたい方は、食事と生活習慣の章から読んでも大丈夫です。

生理前に体重が増える・むくむのは多くの女性に起こる体の変化です

結論から言うと、生理前に体重が増えたりむくんだりするのは、珍しいことではありません。月経前症候群(PMS)の代表的な体の症状のひとつです。
日本産科婦人科学会は、PMSを次のように説明しています。
月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)は、月経の前に現れるこころとからだの不調です。
同学会の情報では、日本人女性の70~80%が月経前に何らかの不調を経験しているとされています。からだの症状として、むくみ、お腹や胸の張り、食欲の変化、便秘などが挙げられています。
ここで知っておきたいのは、生理前の一時的な体重増加は、脂肪が急に増えたというより、水分や腸にたまった便によるものと考えられていることです。数日で体重が増えても、それだけで「太ってしまった」と落ち込む必要はありません。
生理前に太る・むくむ3つの原因

生理前に体重が増える原因は、大きく「水分をためこみやすい」「食欲が増える」「便秘しやすい」の3つです。それぞれが重なることで、体重計の数字が増えやすくなります。
原因1:ホルモンの変化で体に水分をためこみやすくなる
排卵から次の生理までの期間を「黄体期」といい、プロゲステロン(黄体ホルモン)とエストロゲン(卵胞ホルモン)が多く分泌されます。この時期のホルモンの変化が、むくみやお腹の張りに関わると考えられています。
体に水分がたまると、顔や手足がむくんだり、お腹が張ったりします。水分は重さがあるため、そのぶん体重にも表れます。
ただし、ホルモンの量とむくみの強さが単純に比例するわけではなく、しくみのすべてが解明されているわけではありません。「ホルモンの変化をきっかけに、体が水分をためやすい状態になる」と理解しておけば十分です。
原因2:食欲が増え、甘いものがほしくなる
生理前は、いつもより食欲が増えたり、甘いものや炭水化物が無性に食べたくなったりしやすい時期です。日本産科婦人科学会も、PMSの症状として「食欲変化」を挙げています。
背景には、ホルモンの変化にともなう脳内の神経伝達物質(セロトニンなど)のバランスの乱れがあると考えられています。セロトニンは気分の安定に関わる物質で、そのバランスが崩れるとイライラや気分の落ち込みも起こりやすくなります。
食べたい気持ちを我慢しすぎると、かえって反動で食べすぎてしまうこともあります。食べる量やスピードを意識する方法は、マインドフルイーティングのやり方も参考になります。
原因3:腸の動きがゆっくりになり便秘しやすくなる
生理前は腸の動きがゆっくりになり、便秘しやすくなります。便が腸にたまると、そのぶん体重が増え、お腹もぽっこり見えやすくなります。
海外の研究では、月経周期の正常な女性15人を調べたところ、プロゲステロンが多い黄体期は、卵胞期よりも食べたものが腸を通る時間が長くなったと報告されています。
増えた体重はいつ戻る?月経周期ごとの体の変化

生理前に増えた体重は、多くの場合、生理が始まってしばらくすると自然に戻っていきます。ただし、むくみは生理の直前ではなく「生理が始まった日」に最も強いという研究もあります。
62人の女性の約1年間・765周期を記録した海外の研究では、本人が感じる「むくみ」の程度は生理1日目にピークとなり、生理後から排卵前までの卵胞期の中ごろに最も低くなっていました。つまり、生理が始まってすぐに体重が戻らなくても、それは自然な流れです。
| 時期 | むくみ・体重の傾向 | 過ごし方のヒント |
|---|---|---|
| 生理前(黄体期) | むくみを感じ始め、体重が増えやすい | 塩分を控えめにし、無理のない範囲で体を動かす |
| 生理中 | 生理1日目ごろにむくみが最も強く、その後少しずつ落ち着く | 体を温めて休息を優先する |
| 生理後〜排卵前(卵胞期) | むくみが最も少なく、体重が安定しやすい | 体重をチェックする基準の時期にしやすい |
体重の変化を正しく見るには、毎日の数字に一喜一憂するのではなく、月経周期の同じ時期どうしで比べるのがおすすめです。たとえば「生理が終わって数日後」の体重を月ごとに比べると、本当の変化がつかみやすくなります。
- 毎朝、トイレのあと・朝食前など同じ条件で体重を量る
- 体重と一緒に、生理の開始日・終了日、むくみや食欲などの体調をメモする
- 2〜3か月分たまったら、自分の「増えやすい時期」と「戻る時期」を確認する
- ダイエットの成果は、生理後の同じ時期どうしの体重で判断する
記録には、スマートフォンの生理管理アプリや手帳などを使うと続けやすくなります。症状を記録しておくと、婦人科を受診したときにも役立ちます。
食事でできる対策:塩分・カリウム・食物繊維を意識する

生理前のむくみや体重増加をやわらげるには、食事では「塩分を控える」「カリウムと食物繊維をとる」の2つが基本です。
塩分(ナトリウム)をとりすぎると、体は水分をためこみやすくなります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、成人女性の食塩相当量の目標量を1日6.5g未満としています。生理前は特に、汁物や加工食品、スナック菓子などの塩分を意識して減らすことがむくみ対策の第一歩です。
カリウムには、ナトリウムの排出を促す働きがあります。食事摂取基準では、18歳以上の女性のカリウムの目標量を1日2,600mg以上としています。野菜や果物、いも類、海藻、豆類などから取り入れましょう。
ただし、腎臓の機能が低下している方はカリウムの制限が必要な場合があるため、医師の指示に従ってください。
出典:厚生労働省 e-ヘルスネット|カリウム(該当ページより作成)
【独自計算】カリウム2,600mgに届く1日の食品組み合わせ例
「カリウムをとりましょう」と言われても、実際にどれくらい食べればよいのかは分かりにくいものです。そこで、文部科学省の日本食品標準成分表の数値をもとに、目標量の2,600mg以上に届く1日の組み合わせ例を筆者が計算しました。
| タイミング | 食品 | 重さ(可食部) | 100gあたりのカリウム | この量でのカリウム |
|---|---|---|---|---|
| 朝 | バナナ | 100g | 360mg | 360mg |
| 朝 | ヨーグルト(全脂無糖) | 100g | 170mg | 170mg |
| 朝 | 普通牛乳 | 200g | 150mg | 300mg |
| 昼 | ほうれんそう(ゆで) | 70g | 490mg | 343mg |
| 昼 | トマト(生) | 100g | 210mg | 210mg |
| 昼 | 糸引き納豆 | 40g | 660mg | 264mg |
| 間食 | アボカド(生) | 70g | 590mg | 413mg |
| 夕 | さつまいも(皮なし・蒸し) | 100g | 480mg | 480mg |
| 夕 | ブロッコリー(ゆで) | 80g | 210mg | 168mg |
| 夕 | 木綿豆腐 | 100g | 110mg | 110mg |
| 1日の合計 | 2,818mg | |||
出典:文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(食品成分データベース)をもとに筆者が加工・作成(各食品の重さは筆者が設定した目安)
この例のように、特別な食品を買わなくても、身近な食材を3食と間食に分けて組み合わせれば目標量に届きます。表の食品だけで合計2,818mgになり、実際にはごはんやみそ汁の具などからもカリウムをとれます。
ただし、数値は食品や調理のしかたによって変わるため、あくまで目安として使ってください。先に触れたとおり、腎臓の病気などでカリウムの制限を受けている方は、この例を参考にせず医師の指示に従いましょう。
便秘による体重増加を防ぐには、食物繊維と水分をしっかりとることが大切です。食物繊維が多い食材の選び方は、女性におすすめの食物繊維の摂り方で詳しく紹介しています。
日本産科婦人科学会の診断・治療指針では、PMSの生活指導として次のような食事の工夫が挙げられています。
| 区分 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 意識してとりたいもの | 複合炭水化物(精製されていない炭水化物)、カルシウム | 玄米・雑穀ごはん・全粒粉パン、牛乳・ヨーグルト・小魚・大豆製品 |
| 控えめにしたいもの | 精製糖、塩分、脂肪、カフェイン | 甘い菓子・清涼飲料、塩辛いおかず、揚げ物、コーヒーの飲みすぎ |
| その他 | アルコールの制限、禁煙 | 生理前はお酒の量を減らす |
出典:日本産科婦人科学会|月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療指針をもとに筆者作成(具体例は筆者による)
甘いものが食べたくなったときは、完全にがまんするより、量を決めて食べる、ナッツやヨーグルト、果物などに置きかえるといった工夫が続けやすい方法です。
生活習慣でできる対策:軽い運動と睡眠で巡りを整える

食事と並んで大切なのが、体を動かすことと、しっかり休むことです。軽い運動は血液やリンパの流れを助け、むくみ対策にもつながります。
日本産科婦人科学会の指針では、PMSの運動療法として、歩行と同じくらい以上の身体活動を1日60分以上(約8,000歩)、または息が弾む程度の運動を週60分以上行うことが挙げられています。一度にまとめて行う必要はなく、通勤や家事での歩行も合わせて考えてOKです。
- ひと駅歩く、階段を使うなど、日常の歩く量を少しずつ増やす
- デスクワークの合間に立ち上がり、足首を回したりふくらはぎを伸ばしたりする
- 体調がよい日は、息が少し弾む程度のウォーキングやストレッチを取り入れる
- 夜は湯船につかって体を温め、決まった時間に寝る
出典:日本産科婦人科学会|月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療指針をもとに筆者作成
むくみをとる歩き方や時間の目安は、ウォーキングでむくみを取る方法でも解説しています。同じ指針では、規則正しい睡眠も生活指導のひとつとして挙げられています。
なお、腹痛やだるさが強い日は、無理に運動する必要はありません。休む日と動く日を体調に合わせて選びましょう。
生理前にやりがちなNG対策

生理前の体重増加が気になっても、あせって極端な対策をするのは逆効果です。次のような行動は避けましょう。
- 食事を極端に減らす:増えたのは主に水分や便なので、食事を抜いても根本的な解決にはならず、反動の食べすぎにつながりやすくなります。
- 水を飲まないようにする:水分を控えると便が硬くなり、便秘が悪化する原因になります。
- 自己判断でむくみ取りの薬やサプリを使う:薬が必要なほどのむくみは、婦人科で相談するのが安全です。
- 毎日の体重に一喜一憂する:周期による変化を知らないまま数字だけを見ると、不要なストレスがたまります。
生理前は「体重を減らす時期」ではなく「増えすぎないように整える時期」と考えると、気持ちもラクになります。
つらいときは婦人科へ:受診の目安と主な治療

生理前の不調で日常生活に支障が出ている場合は、がまんせず婦人科を受診しましょう。PMSには、医療機関で相談できる治療法があります。
- 毎月決まって生理前に症状が出て、生理が始まると軽くなる
- むくみやお腹の張り、痛みで仕事や学校、家事に支障がある
- イライラや気分の落ち込みが強く、人間関係や生活に影響している
- 生理が終わっても体重増加やむくみが続く
気分の落ち込みやイライラなど、こころの症状が特に強い場合は「月経前不快気分障害(PMDD)」と呼ばれます。日本産科婦人科学会の診断・治療指針では、PMDDは精神症状が目立つPMSの重症型と位置づけられています。
| 治療の種類 | 内容 |
|---|---|
| 生活指導 | 症状日誌の記録、食事・運動・睡眠の見直し |
| 低用量ピル(OC・LEP) | 排卵を抑えてホルモンの変動をおだやかにする。日本の診療で多く使われている |
| SSRI(抗うつ薬の一種) | セロトニンの働きを整え、こころの症状をやわらげる |
| 漢方薬 | 加味逍遙散、当帰芍薬散、抑肝散などが使われる |
| 対症療法 | むくみには利尿薬、痛みには鎮痛薬など、症状に合わせて使う |
出典:日本産科婦人科学会|月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療指針をもとに筆者作成
どの治療が合うかは、症状の重さや年齢、妊娠の希望、持病や服薬の状況によって変わります。受診の際は、記録した体重や症状のメモを持っていくと、医師に伝わりやすくなります。
まとめ
生理前の体重増加やむくみは、ホルモンの変化による一時的なもので、多くは生理後に落ち着いていきます。仕組みを知って、自分の周期に合わせて付き合っていくことが、心と体を守るいちばんの近道です。
全部を一度に取り入れなくて大丈夫です。まずは「次の生理前は汁物の塩分を少し控える」「体重と生理日をメモする」など、ひとつだけ決めてみてください。つらさが続くときは、ひとりで抱え込まずに婦人科を頼りましょう。
よくある質問(FAQ)
参考文献・出典一覧
この記事の数値や目安は、以下の公的機関などが公表している資料を確認したうえで作成しています。
- 日本産科婦人科学会|月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)
- 日本産科婦人科学会|月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療指針
- 厚生労働省 e-ヘルスネット|ナトリウム/厚生労働省 e-ヘルスネット|カリウム
- 文部科学省|日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(食品成分データベース)
- White CPら(Obstetrics and Gynecology International)|Fluid Retention over the Menstrual Cycle: 1-Year Data from the Prospective Ovulation Cohort
- Wald Aら(Gastroenterology)|Gastrointestinal transit: the effect of the menstrual cycle
